OK COMPUTER 20th Anniversaryに際して思う事

RADIOHEADが、3rd Album「OK COMPUTER」の20周年を記念して、特別盤をリリースすると発表した。

ファンは、多いに沸いている。

 

幻の名曲を遂に公式リリース

今回、20年の時を経て漸くリリースされる事になった「Lift」「Man of War」「I Promise」は、2nd Album「The Bends」のTourで演奏され、次作に収録されると噂されていた曲である。

中でも「Lift」は、ファンの間でも、当時から人気が高くリードトラックになるだろうと推測されていた。

しかし、その予想に反して、結局は20年間も"冷たい倉庫の食器棚"に置かれたままになっていたのである。

 

RADIOHEAD史における未発表曲という存在

未発表曲と言うのは、彼らの歴史において珍しいものではない。

新曲を作ると、ライブでの演奏を重ね、完成に向けて練っていくのが、彼らの主なスタイルで、当然そのままレコーディングされる事なく、未だ日の目を見ていない作品もある。

それでも、彼らは何度もそれらにトライし、納得のいく形に仕上げ、リリースしてきている。

例を挙げると、'01年の4th Album「Kid A」収録の「Motion Picture Soundtrack」は、95年に既に披露されていたし、'08年の7th Album「In Rainbows」収録の「Nude」は、98年には演奏されていた。

 そして、「Lift」も昨年リリースされた9th Album「A Moon Shaped Pool」に向け、再度トライされていた様である。

 

今、「Lift」が公式にリリースされるという事

先日、英国のラジオ番組で放送されたインタビューで、ギタリストであるエド・オブライエンは「Lift」が何故「OK COMPUTER」に収録されなかったのかについて、こんな風に話している(と思う)。

"「Lift」はとても面白い曲で、ライブで演奏した時、観客の熱狂は伝染していく様だった。もし、僕らがそれを正しい形で完成させていたならば、レコードは更に売れ、今とは違った場所に導いてくれただろう。そして、そうなれば僕たちは終わっていたと思う。

それほどの高いポテンシャルを持った曲を、スタジオでレコーディングしようとした時、まるで頭に銃を突きつけられている様なプレッシャーを感じたんだ。

だから、僕らはその曲を無意識のうちに台無しにしたんだ。"

何故それ程までの曲を、20年前にレコーディングしたエド曰く"かなり良い"バージョンで、リリースするのか。

それは、彼らがそれらの曲に見切りをつけた、もしくは諦めたという事ではないかと思う。

"ギターロックバンド"であった当時の彼らが作った曲を、それ以降に様々な楽器を取り入れ変化してきた現在の彼らでは、当時以上に納得のいく形に仕上げる事は出来ないのではないだろうか。

そして、それが意味するのは…。

RADIOHEADの終わり

4th Album「Kid A」の頃から、既にメンバー全員で作り上げていないのではないかという疑惑はあった。

8th Album「The King Of Limbs」以降は、ファンの間でも、中心人物のトム・ヨークジョニー・グリーンウッド以外のメンバーの存在感の薄さが、冗談半分とは言え、語られていたほどだ。

今回彼らが、当時レコーディングした未発表曲を、「おまけ」として発表する事を選択したのには、バンドとして、ある種の終わりを感じざるを得ない。

一度は、RADIOHEADという大きくなりすぎた存在と、どうにかして折り合いをつけた彼らだが、次に向かい合うことになった時、再びそれに勝ちうる気力がメンバー全員に残っているのか、いささか不安である。